世の中を考える季節である。進学で環境が変わる。就職で実社会にです。いやでも社会と向き合う人も多い。人間は社会的な生き物であり、一人ひとりが社会をつくっている。しかし、「わたし流」だけで生きようとすると、仲間や会社、国とぶつかってしまう。社会でどう生きるか。ヒントを探したい。

映画評論家の佐藤忠男・日本映画大学名誉学長は苦労人だ。工場など勤め先をなんども解雇されながら、読者投稿家から文筆家になった。体験をもとに若い世代に向けて書いたのが『自分らしく生きてゆけないのはなぜか』。

一人の人間は好きに自由に生きたいと思っている。とはいえ、家族や仲間、国とつながっているので、全くの独りぼっちで交流もないというわけにはいかない。一方で、集団に入り込みすぎると、全体のために個人を犠牲にする考えに陥りやすい。

日本経済新聞/2018/03/09/日付/読むヒントより