古典、哲学からIT(情報技術)経営の極意まで漫画で学べる書籍を出版社が相次ぎ発行している。AI(人工知能)、仮想通貨、データ経済圏など時代はますます複雑化し先が見えない。そんな世の中を読み解き生きるヒントを考察するには、難解な用語や文章ではなく直感的に頭に入りやすい漫画が今の読者に受け入れられやすいとの読みがある。漫画に慣れ親しんだ世代にはもってこいで、専門書を手に取るステップにもなる。

哲学・経営術…わかりやすく解説

「まんがでちゃちゃっと4000年!」。講談社が4月に発売した「まんが学術文庫」のキャッチコピーだ。今年で生誕200年をむかえた思想家のカール・マルクスの「資本論」など偉人にまつわる哲学書や古典を漫画で紹介する。6月初め時点で8人だが、毎月1、2人増やしていく。

「批判は覚悟の上だった」と話すのはシリーズを担当した石井徹編集長。ニーチェの超人思想「ツァラトゥストラはかく語りき」の漫画では、冒頭にサッカー少年とのやり取りを入れるなど思い切って現代的に描いているからだ。

江戸時代の儒学者、荻生徂徠では舞台を2055年の東京に設定。国民の住む地域を職業などで区切ったり、AIが国の国政を決定したりと、近未来の世界を描き、読者の興味をそそる。

石井氏はわかりやすさを重視しなければ売れないと、自身の経験から感じていた。伯父は有名な社会学者として知られていたが、学術本の文章にはほとんど句読点がなく専門用語だらけ。難解極まりなかった。

諸般の部数は12万部だが、好調に売れ行きを伸ばしている。郊外の駅付近の書店では男性会社員の購入が多く、売り切れる書店も続出した。最も人気がある哲学者のショーペンハウアーの「幸福について」と、2位の「資本論」は発売から2カ月もたたないうちに重版を決めた。

日本経済新聞/2018/06/09/日付より