全国に広がりを見せている「子ども食堂」。地域の子どもに無料または低額で食事を提供する取り組みだが、その枠を超えた食支援の取り組みも始まっている。支援が必要な家庭に出向いて食事を作る取り組みや、「食育」の観点から家庭科室で朝食を提供する小学校を紹介する。

「来られない」家庭支援

東京都江戸川区の集合住宅の一室。5月上旬、同区の「おうち食堂」事業の支援員が、夕食の準備に台所で忙しく立ち働いていた。冷蔵庫の中身も確認し、メニューはサケフライとポテトサラダ、みそ汁。小松菜を下ごしらえして冷蔵庫に入れ、離乳食用にジャガイモとニンジンをつぶしたものも用意した。

隣室ではこの日初めて訪れた区職員が、母親(43)に民間のフードバンクから入手したコーンフレークなどを手渡し「お子さん、どうですか」と声をかけた。この家庭は両親と長男(3)、次男(6ヶ月)の4人暮らしだが、家庭の事情から子育てに悩みを抱えている。

事業委託先のスタッフが次男をあやす間、母親(43)は少しずつ、自分の状況を語り始めた。次男の妊娠中は体調も優れず、長男にはパンとジュースをテーブルに出してやることしかできない時もあったこと。仕事を探さなければと思うが、子育てに追われ、思うようにいかないこと。

耳を傾けていた区職員が「お母さんはいつも自分が我慢したりするのね。でも、もっと自分のことを大切にしていいと思う。子ども食堂がこの辺にもできてね、赤ちゃんも見てくれるから、行ってみたら」と言葉をかけると、母親は涙をこぼし、うなずいた。

毎日新聞/2018/06/13/日付より