阪神大震災の被災者の声きっかけ
備蓄食となる柔らかいパンの缶詰を開発した栃木県の小さな町のパン屋さんの挑戦を紹介した児童書「世界を救うパンの缶詰」(ほるぷ出版)が昨秋刊行され、話題になっている。
「おいしくて柔らかくて、無添加で長期保管ができるパンの缶詰を作りたかった」
栃木県那須塩原市にあるパン屋「パン・アキモト」社長の秋元義彦さん(65)は、12日夜の東京都内で講演し、パンの缶詰作りに挑戦した日々を振り返った。
きっかけは、1995年1月17日に発生した阪神大震災。秋元さんは「被災した方のために何かしたい」という思いに駆られ、焼き立てのパンを栃木県から神戸に届けた。だが、被災者の手元に届くのに時間がかかり、パンの多くが腐敗していたという。
「被災者のために」と焼いたパンが食べられず、捨てられたことにやりきれなさを感じていたところ、被災者から「乾パンのように保存がきいて、秋元さんに送ってもらったような柔らかいパンを食べたい」という声を聞いた。秋元さんは「パンの缶詰作りは、パン屋のミッションだ」と決心し、備蓄食となる「パンの缶詰」作りに乗り出した。
毎日新聞/2018/01/24/日付より