生徒に継続して新聞記事をスクラップさせている高校が県内に複数ある。成績評価の対象にもなる宿題だったり、学級当番の仕事だったり。長年続く高校では、いつ、誰が始めたか伝わっていなくても、現在の教員が「文章を書く力が付く」との手応えや「なぜ学ぶのかを考えるようになってほしい」といった願いを持って受け継いでいる。生徒の言葉からも、記事の要約や自分の考えを簡潔に書く力が付く効果が見えてきた。
考え簡潔に…県内各高校で実践
諏訪実業高校(諏訪市)商業科、会計情報化の3年生(計3学級)は週1回、新聞から気になる記事をA4判ノートにスクラップし、要約や自分の考えを書いている。必須科目「総合実践」の宿題で、成績評価の対象になる。
会計情報化3年C組の3人に見せてもらった。小池伽奈さんのノートには、霧ケ峰高原でニッコウキスゲの群生地をニホンジカの食害から守る電気柵設置の記事があった。「私も中学時代に植栽活動に参加した。その体験も交えて書いた」。中島杏奈さんは、1日の大半をゲームに費やし、それを止めようとした母親に暴力を振るった中学生の記事について「私たちと年が近い。誰もが陥る可能性があると思った」と語った。
月曜日にある授業で提出するため、3人とも週末に取り組む。「大変です」「4月に宿題の話を聞いた時は『書けない』と思った」と苦笑いがこぼれる。北沢唯さんは「意見をたくさん書くのは難しくて、要約で埋めているかも」。それでも「記事を書き写すわけにはいかない。表現を変えたり、大事な部分を抜き出したりしている」と表現の工夫を話した。
「総合実践」は本年度、経論3人が担当する。その一人で3年C組担任の松田健一教諭(30)は、3年前にもこの科目を担当し、生徒のスクラップを見てきた。「使う漢字や語彙が豊かになるし、相手に伝わるように書く力、文章をまとめる力が付く」。1年間続けることで力が付くと感じている。
信濃毎日新聞/2018/07/25/日付より