女性の経営幹部を育成する手法として「シャドウイング」を採用する企業が出てきている。社長や役員に影のように同行して経営最前線の職務を学ぶ。部局の壁を超える広い視野、10年先を見据える発想を習得することが幹部を目指す動機付けになっている。各社の取り組みを追った。

経営陣に付きっきり「シャドウイング」

社長の問いに役員が間髪を入れずに答えるー。損害保険ジャパン日本興亜の社長オフィス特命部長の小坂佳世子さん(47)は経営会議に同席した瞬間、緊張感のある空気に背筋が伸びる思いがした。

小坂さんは社長に付くシャドウイングを体験中。これは、幹部候補が経営層の業務遂行の現場に立ち会い、普段は見ることが出来ない意思決定などに触れて視野を広げるもの。幹部を目指すモチベーション向上にもつなげる。

同社は2017年度からシャドウイングを通じて経営プロセスを学ぶ社長オフィスを新設した。部長クラスの男女1人ずつが配属される。午前は経営会議に同席。午後は社長と各部の打ち合わせに加わり、その後、社長とディスカッションする。時に課題が与えられ役員と議論し解決策を報告する。

ダイバーシティ(人材の多様性)を経営戦略の一つに掲げる西沢敬二社長は、社長同行を取り入れた狙いについて「通常なら数年かかる経験を1年で体感してもらいたい」と語る。小坂さんは、18年4月に特命部長として社長オフィスに配属された際、期待と人々の価値観、生活スタイルが変わっていくなかで、「どう貢献できるのか、会社はどのように進化していくべきか」という広い視点を重視するようになった。

日本経済新聞/2019/02/18/日付より