道開いたノーベル賞の成果

リチウムイオン電池、宇宙、細胞の機能

今年のノーベル賞の自然科学3賞が決まった。化学賞にはリチウムイオン電池を開発した吉野彰氏が選ばれ、日本からノーベル賞は2年連続となる。物理学賞は宇宙についての研究が、医学生理学賞は細胞内の機能に関する研究が受賞対象となった。研究をそれぞれ紹介する。

〇化学賞

化学賞はリチウムイオン電池開発に貢献した吉野氏と、米国のジョン・グットイナフ、スタンリー・ウィッティンガム両氏に贈られる。

電池は、化学反応で負極(マイナス極)から正極(プラス極)へ電子を送って電気エネルギーを作る。吉野氏は、グッドイナフ氏の考案した化合物「コバルト酸リチウム」を正極に、炭酸素材を負極に使い、1985年にリチウムイオン電池を開発した。充電すると正極に含まれるリチウムがイオンとなり、負極へ吸い寄せられる。放電時は逆の反応が起き、リチウムイオンは正極へ戻る。この時負極から正極へ電子が送られ、電気エネルギーとなる。

電池は長い研究の歴史があるが、リチウムは性能向上が期待できる材料だと有望視されてきた。理由は二つあり、一つは原子番号が3と小さく、金属では最も軽いため電池を軽量化できること。もう一つは電子を放出してイオンになりやすく、化学反応が簡単に起きることだ。

毎日新聞/2019/10/17/日付より