新潟女児殺害事件から間もなく2カ月。登下校時の小学生をどう守るかが問われるなか、防犯活動に新しい動きが広がっている。犬の散歩を兼ねて見守る取り組みや、高校・大学生らの若い力を活用する試みだ。あの手この手で小学生の安全を守る活動の今を追った。

地域全体で防犯の目、抑止に

「こんにちは。気をつけて帰ってね」。和歌山市の主婦、津村真由美さん(52)は愛犬「ジョイ」を連れて散歩中、下校する小学生に声をかけた。ジョイの首には「ぼうはんパトロール犬」と書いた黄色いバンダナが巻かれている。

津村さんは、犬の飼い主が散歩しながら小学生を見守る謀判活動に参加する。2015年に和歌山市北部で始まった。登録時に市からもらったバンダナとバッグを身につけて散歩に出かける。活動は市全域に広がり、4月末現在で390人、403頭が登録した。

活動のきっかけは津村さんの友人、吉増江梨子さん(38)の発案だった。同市在住の吉増さんは、15年前に近くの紀の川市で男児殺害の事件が起きた際、不審者情報が住民に伝わらなかったことに疑問を持ち、飼い主の間だけでも共有したらどうかと考えた。「犬の散歩は朝晩、毎日ある。人によってルートや時間がまちまちなので監視の目が行き届き、防犯効果は高い」と吉増さんは話す。

参道の輪は、自治会や警察、和歌山市を巻き込む形で広がった。市は16年度から予算で事業費を計上。これまでも防犯活動に犬の散歩を活用する事例はあったが、地域が限られていた。予算を付けて全域で実施する自治体の例は全国的にも珍しいという。

日本経済新聞/2018/06/29/日付より