アフリカのガーナに「世界の電子廃棄物(eウエースト=e―waste)の墓場」と呼ばれる場所がある。先進国などで役目を終えた電化製品が一帯を覆う。現地の人々はeウエーストを燃やして金属を取り出し、1日5㌦を稼ぐといわれる。

長坂真護(35)はこの「アグボグブロシー」地区に暮らす人々を描き、環境の改善に取り組む画家だ。油絵の中からこちらを見つめる人々の視線。近づくと、その目に半導体が埋め込まれ、ゲームのコントローラーも貼り付けられている。どれも現地で集めたeウエーストだ。

2017年、単身でガーナの首都アクラに向かった。始まりは偶然だ。たまたま見かけた経済誌に載っていたゴミ山の写真に衝撃を受け、アグボグブロシーをめざした。現地には想像を超える世界が広がっていた。

「家電を燃やす黒煙が立ちこめ、近くの市場からタマネギなどの生ゴミも捨てられる。それを食べる家畜と虫。臭いと煙で頭痛が続き、沼地で靴もべちゃべちゃ。最悪だった」。最初は訪問したことをSNS(交流サイト)に投稿しなかった。見なかったことにしようとした。

日本経済新聞/2020/06/17/日付より