読書家の知識人で知られる立命館アジア太平洋大学長の出口治明さんの新書「還暦からの底力」が今年、シニア層を中心に大きな反響を呼んできた。定年制や敬老の日の廃止など、日本の〝常識〟の転換を説く一冊だ。話を聞いた。

新書「還暦からの底力」話題  出口治明さんに聞く

よくある中高年向けの指南書ではない。「この本で訴えたかったのは『性別や年齢からフリーで生きていこう』ということです」と出口さん。

例えば性差の味方。「男性と女性は違うけど平等だ、といわれるが、こういう『異質平等論』は時代遅れ。開明的なようで、極めて抑圧的な古い発想です」。ドキッとした人も多いのでは?

なぜ駄目か?「人間を男性と女性の二つに分ける考え方でしょ。もっと分かりやすく言えば、性的少数派(LGBTなど)の存在する余地がなくなる。男らしさ、女らしさとは何かとか、アホみたいなことを言う人も現れる。そこに合わない人は苦しむわけですよ」

多様性を尊び、誰もが受容される社会を目指すのが、世界のトレンド。その根幹には「性別や年齢差より、個人差の方がはるかに大きい」との考え方があると指摘する。

信濃毎日新聞/2020/12/01/日付より