定年後はテレビドラマや映画のエキストラに挑戦ー。そんなシニアが増えている。演技経験を問われないためボランティアとして気軽に参加でき、俳優と「共演」するなど非日常の体験ができる。現場の緊張感を味わうことで生活にも張りが出る。ただ、撮影の時間や場所が不規則になりがちで無理は禁物。生活スタイルに合わせて楽しみたい。
気軽に参加 憧れの俳優と「共演」
9月下旬にテレビ朝日系列で放送された「ドラマスペシャル 指定弁護士」。大阪府高槻市の西依宏明さん(65)はエキストラで記者役を務めた。
ドラマでは、議員役の石橋蓮司さんを取り囲む記者団の一人として、カメラを持った西依さんが映る。「わずか数秒です。それでも、こうした大型ドラマに出演できた喜びは大きい」と笑顔を見せる。
西依さんはパナソニックに約40年勤務。6年前に退職後、知人からドラマや映画のボランティアエキストラを勧められた。演技の経験は無く、芸能界に強い興味があるわけでもなかった。ボランティアは出演しても出演料は出ず、交通費も自己負担。しかし、「会社員時代とは違った経験ができる」と魅力を感じ、映画会社にボランティアエキストラの登録をした。
ほかに、大阪フィルム・カウンシル(大阪市)などボランティアエキストラを手配する地域の撮影支援団体、フィルムコミッションにも登録。エキストラとして、ドラマ、映画、行事など約100本に出演した。
西依さんは平日は用務員として自宅近くの保育園で働いているため、撮影に出向くのは原則、土・日曜日。「ボランティアだと、こちらの都合が悪いときは行かなくてもいい。出演料なしでも独自の記念品をもらえることが多い。エキストラ生活は楽しく、続けられるところまで続けたい」と話す。
京都市の大八木泰弘さん(63)は2年前に公務員を定年退職した後、映画「マンハント」のロケが大阪で実施されエキストラを募集していることをテレビで知った。学生時代から映画好きなこともあって応募し、地下鉄駅での乗客などの役を得た。
大八木さんも映画会社やフィルムコミッションに登録している。昨年はエキストラを72回担当し、今年はもうすぐ70回になる。
日本経済新聞/2018/10/18/日付より